日本とヨーロッパを比較したときに、電線の地中化がなぜ進みにくいのかを 地理的な観点 と 行政的な観点 の両面から整理してみます。
1. 地理的な観点
(1) 地形・地質の違い
• 日本
• 山が多く、平野部が狭い。都市も山際や海岸線に集中し、地下空間の利用余地が限られる。
• 地盤が脆弱な地域も多く、地中化工事の掘削コストが高い。
• ヨーロッパ
• 広大な平野が多く、地盤も比較的安定している。地中に埋設する工事が技術的にもコスト的にも行いやすい。
(2) 自然災害の頻度
• 日本
• 地震、台風、大雨、豪雪など多様な災害が頻発。
• 特に地震では地中設備が損傷すると復旧に時間がかかり、信頼性の観点からもリスクがある。
• ヨーロッパ
• 大地震や台風は少なく、地中設備を長期的に維持できる環境。
(3) 都市インフラの過密度
• 日本
• 都市部は水道・下水・ガス・通信など地下インフラが既に密集しており、空間に余裕がない。
• ヨーロッパ
• 都市設計が比較的ゆったりしており、道路や地下インフラの再配置が可能。
2. 行政的な観点
(1) 費用負担の構造
• 日本
• 電線地中化の費用は、国・自治体・電力会社・通信会社・沿道事業者が分担するが、調整が難しい。
• 特に地方では採算が合わず、優先度が下がる。
• ヨーロッパ
• 公共インフラ整備を自治体や国が強力に主導するケースが多く、コスト負担の仕組みが明確。
(2) 都市計画の位置づけ
• 日本
• 戦後の高度成長期に電柱・電線が急速に整備され、既存インフラを更新する発想が弱かった。
• 都市美観よりも「速さと低コスト」での供給が重視された歴史的経緯。
• ヨーロッパ
• 中世から続く景観保護の意識が強く、都市計画に「地中化」が最初から組み込まれている。
(3) 政策推進力の違い
• 日本
• 国交省・自治体・電力会社の間で調整が必要で、利害調整に時間がかかる。
• 法制度的にも「景観」や「防災」を理由にした強制力が弱い。
• ヨーロッパ
• 景観保護法や都市保存条例などが強く機能し、行政が規制的に推進できる。
まとめ
• 地理的要因
→ 日本は「山が多い・地盤が脆い・自然災害が多い・地下インフラが過密」という不利な条件が重なっている。
• 行政的要因
→ 日本は「費用負担の不明確さ・都市計画上の優先度の低さ・調整の複雑さ」が障壁になっている。
• ヨーロッパは 「地盤が安定・災害が少ない・景観意識が高い・行政主導が強い」という条件が整っているため、地中化が進みやすい。

